「あー、ケータイ忘れてきたわ」
「マジ? カケル今日どーすんの」
「しょーがねえな。自由に生きるとするかっ」

「静かに出来ないのか、君たちはっ! それに、中学生で学校に携帯電話を所持し、持ち込むなど……時代も変わったものだ」

朝の会の途中、カケルくんがわざとらしくケータイ忘れてきたアピールをする。
一挙一動で、何でも目立てりゃいい、って感じだ。

カケルくんの言動に隅から隅まで茶々を入れるのは、ご存知トシオ。
もう恒例のやりとりなので、気にせずわたしも髪の毛をまとめる。

朝は急いでたから、結ぶヒマもなかったのだ。
今日はみつあみにでもしよう。
理由は、トシオの機嫌が悪そうだから。
「左右田! こんな時に、話も聞かず何をやっとるんだっ。今すぐ、手をとめろ!」

いつもとりたてて悪いこともせず、ちゃんと大人しくしているわたしが、トシオに名指しで怒られた。
こんなの、初めてだった。