「いってきまーす」
重々しいドアを開ける気持ちもまた、ものすごく重かった。

今日、またあの人に会えるだろうか。
メールアドレスもケータイの番号も聞き逃して、それどころかジュース代も払ってもらってない。
このまま、さよなら、なんてことだけは避けたい。
なぜなら、また会って話をしたいから。
単純な理由だ。


でも、それだけじゃぁ、ない。
藤田さんについて、本人から聞きたい。
あそこまで話しておいて、やっぱりムリ、だなんて虫が良すぎるもの。
わたしには、しっかり聞く権利があるのだと、思う。

深呼吸一つして、わたしは歩き出した。
一角まがったところで、いつもどおり加奈ちゃんと待ち合わせる。
加奈ちゃんが、わたしの名前を呼んで、わたしも返事をする。
いつものパターン。