「は、はは……わかってますって。大事な命、ですもんね!」
一瞬にして血の気のうせたような顔になり、今野さんは生真面目に言う。
威圧感におされ、わたしはたじろぐ。

「違うよ……オマエは、分かってないんだ。本当に……」

何なの。
じゃあ、じゃあ。

「じゃあ、先輩は分かってるって言うんですか? まだ……中3なのに」

分かるわけ、ないじゃない。
親だって生きてるし、今の時代ひいおじいちゃんとかだって、生きている人はいる。

わたしの反論に、今野さんはフッと笑って

「さあな」

とだけ言った。
あの笑い方じゃなく、今度は遠い目をした、何かを想うような、はたまた、自嘲するような顔だった。