「すっごいですね! わたしなんか、その逆ですよ」
褒めたいんだか、自虐したいんだか。
だけど今野さんは、独特の優しい笑い方で笑っていた。
口の角がキュッとあがって、目はタレ目になる。
とても楽しそうだな、とその笑顔を見て思う。

「ヤバイな、それは。どこ、目指してるんだ」
この人もこの人で、トシオみたいなことを言う。

「それ、トシオとおんなじじゃないですか。わたしはまだ、行きたいところなんかありません!」
「なんだ、トシオって英語のだろ? アイツ、良いヤツじゃねーか」
今野さん、あの男の何を見て、そんなことが言えるのかしら。

「アイツ、最悪です。もう、死ねって感じ。ウザいし、前の中学と比べるし、バカにされてるし……」
「おい」
「は?」
「死ね、とか冗談でも言うな。オマエは、わかってないんだ」