「みんなの前では、なんかこっぱずかしくて」


バツが悪そうに、ほんの少しだけ照れたように、森川さんは小さく笑った。


「ほら、みんな、彼女いないじゃん?だから……」


「あ、ああ……たしかにみんな、ひがみそうですもんね!彼女がいるって知ったら……」


と、笑いながらそんなことを言ったら、なんだか自分が、やっぱりちゃんとした“彼女”なのだと感じて――変に戸惑ってしまった。


「当分――クリスマスが終わるくらいまで……内緒にしときましょうかね」


「……なんか、ごめん」


ようやく、ふたりの間の空気と、あたしの不安がほぐれて――あたしはほっと息をついた。

昨日から張りつめていた緊張の糸が切れて、心が穏やかになっていくのを感じる。


ベンチに座る、ふたりの間にあいた、いっこうに縮まらない距離でさえ――気にならなくなった。

あたしって単純だ。



ただ、捨てられることを……恐れているだけ。