胸の奥が、棘が刺したように――ちくりと痛む。

考えてみれば、“彼女”だと言ってもらったこともなければ、“好きだ”と言ってもらったこともない。

この宙ぶらりな、あたしの存在は……一体、何なんだろう。


――大事な、存在。


嬉しいはずのその言葉さえ――今のあたしには、理解することが出来なかった。


「どうして……部室で、あたしに冷たくするんですか……?」


息が凍る。

白く残った森川さんのため息に、あたしははっと我に返った。

少し冷めたように、遠くを見つめる無表情な瞳は――きっとあたしを鬱陶しく思ったに違いない。


「――ご、ごめんなさい……!変なこと聞いちゃって……」


慌てて手を振り、うつむいた。

呆れられるのが怖くて、森川さんの顔を見ることが出来なかった。


「……ごめん」


でも、森川さんの反応は意外なものだった。


「ごめん、昨日部室で無視して」


あたしの頬に触れようとした手は――残念ながら空を切っただけだった。