「明日は部室行ったら?」


マンションを出るとすぐに、雨が降りだした。

ずいぶんと久しぶりの雨は――肌を刺すように冷たい。


「……どうしてですか?」


「最近、部室行ってないでしょ?ここ一週間くらい、ずっとうちにいたから」


あの日以来……部室には行っていない。


「みんなに怪しまれるよ。週に2、3回は顔見せてたのに、こんなに部室に来ないなんて」


怪しまれて困ること、なんて――あたしにはなにもないのに。

まるで流れ星のように、窓を伝い飛んでいく雨のしずくを、あたしはぼんやりと眺めていた。


「おれも明日は、学校が忙しいから。一緒には居れないかも」


「――はい……」


急に寂しくなって、あたしはうつむいた。

もうすぐ家に着いてしまう、残されたあとわずかな時間が――たまらなく寂しい。


「……週末、晴れるといいね」


頭をなでてほしい、と、とっさに思い、

あたしの頭をなでてくれる手は、この人ではなかったのだと、気づいてしまった自分が――たまらなく虚しかった。