「いらっしゃいませ、お嬢さま」


大学生風の女の子たち。

綺麗めなお姉さん。

セーラー服を来た女子高生。

ママに手をひかれた、小さな女の子。



みんながみんな、驚いてこちらを振り返っている。

そりゃそうかも。
だって――ガタイのいいメイドさんが、5人も並んでるんだもの。


「そこのお兄さん、ワタシたちが愛を込めて焼く、おいしいクレープはいかが?」


……あ、逃げられてる。


「もういやだ……おれ絶対外出ない……」


テントの奥、クレープを焼く台の下にしゃがみこんで、表に出てこないのはリュウくん。


「リュウくん、可愛いよ?あたしなんかより全然」


「中林……おれはそういうことを言いたいんじゃない……!中林は恥ずかしくないの?」


「そりゃあ……」


あたしは、無理やり着せられたメイド服のスカートを見下ろしながらつぶやいた。


「恥ずかしいけど――みんな着てるからいいじゃない?ほら、“みんなで渡れば怖くない”的な」


そんなあたしを見上げていたリュウくんは、膝を抱えたまま大きなため息をついた。