「行きたいって言いだしたのは兄貴じゃん。隼人さんなんかは嫌がってるのに」


ケラケラと笑いだした弟とは対照的に、兄は凍りついたように固まってしまった。


「カイ先輩……」


「かおるちゃん……はは、これにはわけがあって……」


「もう知りません!彼女がいるのに……そんなの浮気じゃないですか〜!!」


あたしは泣き真似をして、部室を飛び出した。

薫〜帰ってこーいと、中からカイ先輩の声がするけれど、もうあんまりにも頭にきた。


外に置いていた自分のカバンをあさっていたら、お兄ちゃんがやってきた。


「おまえ、もう具合は大丈夫なのか?」


少し心配そうに、あたしの顔を覗きこんだお兄ちゃんの質問には答えずに、あたしはお兄ちゃんを見上げた。


「お兄ちゃん……打ち上げ……キャバクラ……」


そこまで聞いた兄は、ぶっ、と吹き出して笑いだした。


「今日はやたらカイがはりきってるよなぁ。浴衣イベントだから」


あたしは深いため息をついた。

どうして男って生き物は――みんなこうなんでしょう。