「……クレープ」


静まりかえった個室に響いたのは、今まで一言も発してなかった森川さんの声だった。


「人気投票制にするとか。客に、最初に俺らの中から一人指名してもらって、そいつがクレープ焼いて接客」


エプロン姿のカイ先輩が笑顔でクレープを焼いている姿を想像して、あたしは思わず吹き出した。


「で、その指名が一番少なかったヤツが、なんらかの罰ゲーム。こうすりゃみんな、やる気だすんじゃないっすか?」


「ちょっと面白そうかも……」


やる気のないみんなのことだから、反対意見が出ると思ったのに、意外にも、数人が食いついてきた。


「女性客ねらいだ。別腹デザートにすれば、他のサークルで飯を食われても、まだうちにも来てくれそうだもんな」


「ホストみたいで喜ばれるんじゃね?もしくは逆メイド喫茶」


どうやら、今モータースポーツ同好会の部費のお財布の中は、よっぽど寂しいことになっているみたい。

こんなにやる気を出すみんなを見るのは、初めてかもしれない。