はためくチェッカーフラッグが、初級クラスの走行終了を示した。

すぐに、中級クラスの走行開始の準備を呼びかけるアナウンスが流れる。


「よし薫、行くぞ」


「……はいっ!」


カイ先輩からヘルメットを受け取り、あたしはローレルの助手席に乗り込んだ。

相変わらず、不安と緊張で心臓が破裂してしまいそうだ。


慣れないヘルメットを押さえたあたしの手に、レーシンググローブ越しのカイ先輩の手が重なった。





「――大丈夫」





深く、胸に染み込むその声に――あたしの鼓動は不思議と静かになった。

重ねられていた手が離れ、あたしの指先からほんの少しだけ熱が奪われていった。



見上げた運転席のカイ先輩は、ハンドルを握りしめたまま、

恐ろしいほどの瞳で、正面を見据えていた。



ヘルメットの隙間からのぞく、ぎらぎらとした眼光に、あたしは思わずぞくりとした。



いつものカイ先輩からは考えられないほどの、

強く、鋭いまなざしだった。