いつもの笑顔が、歪んでる。

まるで悪いことを必死に隠そうとしている子どもみたいだ。


「キャ、キャバクラなんて行くわけないだろ〜」


ひらひらと華麗に右手を振る先輩の目は――あさっての方向を向いている。

そこで、無言のままあたし達の様子を見ていたリュウくんが、ようやく口をはさんだ。


「“浴衣イベント”」


「へ……?」


わけがわからず、あたしが首をかしげていると、


「今日はね、キャバクラのお姉さんたちが浴衣着てるイベントの日なんだとさ」


リュウくんは、あたしの反応を楽しむように笑った。


「おいっ、リュウ!お前そこまでばらすなよ……!」


「ちょっと先輩!なんでカノジョいるのにキャバクラなんて行こうとするんですか!怒られますよ!」


「違うんだよ〜隼人が行こうって言うからおれは仕方なく〜」


「――嘘つき」


その、リュウくんのひと言に――一斉に、あたしとカイ先輩の視線が彼に向けられた。