「じゃあ――どっちが早く恋人作れるか、競争だな」


しまいには、無邪気に笑って、カイ先輩はあたしの胸に、尖ったナイフを突き刺してくれた。

絶望的な言葉は、あたしのキズを致命的なものにした。


「春が来たら、一番にお互いに報告な。でもちゃんと、ふたりで祝うの」


頭が痛くなってきた。

そんな話、したくもないし聞きたくもない。


「男ゴコロがわかんねぇときは、おれに相談しろよ。人生経験豊富なオジサンが、ちゃあんと親身になってやるから」


茶化してあたしの頭をぽんぽん叩いて、カイ先輩はなんだか遠い目をした。

――きっとまた、サユリさんのこと思い出してる。



“競争”だなんて、勝てるわけないじゃない。



「……カイさんより先に、絶対彼氏作りますよ」


あたしの強がり――なみだを隠すために、外を眺めたままつぶやいた。










「――もう寝なさい。まだまだ先は長いぞ」


また、先輩があたしの頭を叩いた。

でも今度は、泣きやまない子どもをあやすように、優しく。


「……はい…………」


全然眠くなんてなかったけれど、あたしはタオルを被って無理やり目を閉じた。