真っ暗な闇の中、流れていく街の灯りを静かに眺めていた。

寝静まった街を、2台のうるさい車たちが駆け抜ける。


「やっぱ夜は涼しいよな!エアコンつけたら燃費が悪くなるから助かるよ」


全開にした窓から吹き込んでくる風が、あたしの髪を手荒になでていく。

主要な国道の割には車が少なく、気づけばスピードメーターの針は、制限速度をかるく越えていた。


「やっぱり夜中は車が少ないですね」


「ああ、このままなら予定より早く着くかもな。おまえは寝てていいぞ」


「大丈夫です!なんか、ドライブみたいで楽しいし……。先輩こそ、眠くないですか?」


「おれは平気。今日は夕方まで寝てたから。いざとなったら薫に運転してもらうし」


あたしは笑って、ハンドルを握るカイ先輩の横顔を見つめた。


「廃車覚悟、ですね」


「うそうそ、おれこの車愛してるから。まだまだ大事にする」


そう言って、カイ先輩はハンドルを抱きしめるようなジェスチャーをした。