結局、カイ先輩の助手席に異議を唱えられぬまま、出発の時間を迎えてしまった。

わざわざ見送りにお兄ちゃんも来てくれた。


「事故んなよ〜!おれは牽引には行かねぇからな」


「隼人も来いよ!タイヤは準備してあるんだろ」


「ばか言うなって。おれはおまえらみたいに暇じゃねぇんだよ」


なんだか、遠足に行く前日みたいに、あたしの胸はどきどきしていた。

それはやはり――カイ先輩の助手席、という、諦めていた、夢のような場所が用意されていたからなのかもしれない。


心が、矛盾している。


「じゃあ森川。そろそろ出るか」


「はい。カイさんが前を走ります?」


「そうだな、おれが先行くよ。休憩は2時間くらい走ったらコンビニに入るから」


リュウくんが森川さんの車に乗り込み、あたしもすぐに、カイ先輩の助手席へのドアをあけた。


「どうぞ、姫」


運転席の笑顔に――あたしは切なくなった。

この恋情は、やはりそう簡単に断ち切れるものではなさそうだ。


「――よろしくお願いします」





「ションベン済ませたか?」


「……最低!」