なんだか妙に胸がドキドキして、あたしは不快だった。


「あのふたりが別れるとはなあ。しょっちゅう部室に連れてくるぐらい、ラブラブだったのに」


思わぬ形で、聞きたくない過去を聞いてしまった。


「……そうなの?あたし、サユリさんって1回ぐらいしか見たことない……」


「ああ、おまえが部室に出入りするより、もっと前の話だよ。おれらが1年の時とか――短大も1年の時は比較的ヒマだから」


「ふうん……」


今では、モ会の部室に出入りしてる女はあたししかいない。

あたしと同じ立場で――いや、もっと上の“カイのカノジョ”って立場として、サユリさんが部室にいた頃があったんだ――……


「サユリちゃんはいい子だったからな――おれや部長なんかとも仲良かったし、上の先輩たちからも可愛がられてた」


背を向けてゲームをする兄貴の後ろで――あたしは改めて、サユリさんという存在にうちのめされていた。