うちに着いて、あたしの様子の異変に一番に気づいたのは、お兄ちゃんだった。


「薫……おまえどうしたんだ?」


あたしの顔を見るなり、そう言ってこちらへ近寄ってきた。

まずい……泣いてしまったのがばれたのだろうか。


「あれ、お兄ちゃん……スタンド、10時までだったんじゃ……」


「台風だから8時で店は閉めたんだよ。おまえがあんまりにも遅いから、迎えに行こうかと……」


この言い訳を、どうしようかと頭が混乱していたとき、兄が意外なことを言った。


「おまえ、やっぱり熱あるな」


「……へ?」


「うん、結構熱い」


そう言われてみると、たしかにさっきから尋常じゃないほどの寒気がするし、頭は重いし、顔はほてってるし。

それはすべて、カイ先輩の前で号泣してしまったからだと思っていた。


「おまえ……ばかだなあ。明日は絶対、休校だっただろうに」


呆然としている妹を目の前に、兄はげらげらと笑ってどこかへ行ってしまった。


そして、その薄情な兄の予言どおり――翌日は台風で学校は休校になり、

せっかくの休みをあたしは風邪のせいで、ベッドの上で過ごすこととなった。