「なんでおまえが泣くんだよ」


カイ先輩は困ったように笑った。


「だって……」


先輩のことが好きだから。
先輩の苦しんでる姿を見るのは、つらいんです。


そう素直に言えたら、どんなに楽になれるのだろう。


「優しいな、薫は……」


消え入りそうな声でつぶやいて、あたしの髪をそっとなでるもんだから――あたしはますます泣いてしまった。




先輩は今、どんな気持ちなの?

助手席に座るあたしに――
愛しい誰かの面影を重ねて見ているの――……?










「――送るよ。ごめんな、こんな雨の日に」


そう言われて窓のくもりを手で拭うと、さっきよりも雨がひどくなっていることにようやく気がついた。

小さくうなずき、すっかり冷めてしまったポテトを口にいれた。


パサパサして全然おいしくないうえに……しょっぱさだけが口に残る。

うちに着いて家族にバレないように、あたしはもう一度、強く頬を拭った。