「あはは……なあんだ」


「ヤキモチ?おれが学科の女の子から貰ったとでも思った?」


にやにやしながら、カイ先輩は意地悪な質問ばかりをしてくる。

ほんとは、サユリさんから貰ったのかな、って思ってたから……でもそんなこと口に出来るはずもなく、あたしは曖昧に笑った。


「うん……そうなのかな、って、思ってました」


「可愛いやつだな。留年してるおれが、学科の女と喋るはずがないだろ」


「はは、そっか」



なにより、そのチョコがお母さんから貰ったものだってことに安心して、あたしは自分のカバンから包みを取り出した。


「まさか――チョコ?」


「うん……遅くなっちゃいましたけど」


するとカイ先輩は、子どものような笑顔になって――あたしのチョコを手に取った。


「……嬉しい」


開けていい?と、あたしの顔をのぞきこんで、カイ先輩はピンクのリボンを紐といた。


カイ先輩の一つひとつの動作が可愛くて――あたしは幸せな気分でいっぱいだった。