カイ先輩のマンションにあがり、真っ先にあたしを待っていたのはいつもの任務だった。


「この前はあんなに綺麗だったのに……」


見るも無惨な部屋の散らかりように、もう慣れつつあるとはいえ、あたしは深いため息をついた。


「や、ほら、この前はおまえと仲直りしなきゃいけなかっただろ?だからあの時は必死に片付けたんだよ」


手をひらひらさせながら悪びれることなく言ってみせたカイ先輩をひとにらみしつつも、

そんなささいなカイ先輩の言葉にも、なんだか愛情を感じてしまうようで――あたしはニンマリした。


あたしと仲直りするために、あんなに下手くそな掃除を頑張ってくれたんだなあ。


「じゃあ……まずは洗濯物から。手伝ってくださいね」


「おう」







何気なく見上げた部屋の入口の壁には、

もう、あの手書きの“ゴミ出しカレンダー”は貼ってなかった。


「……どうした?」


「う、ううん……なんでもないです」




そのことに脅え、
そして心のどこかでほっとしている自分がいた。