「――チョコ?」


「うん……ほら、最近お世話になってたから」


「バレンタインはもうとっくに終わったけど」


「カイ先輩とのごたごたで、すっかり忘れてたのよ」


照れ隠しでリュウくんの肩をバシバシ叩いて、あたしは黄緑色のリボンのかかった箱を手渡した。

リュウくんは怪訝そうにこちらを見て、しぶしぶ、その箱を受け取ってくれた。


「その様子じゃあ、兄貴と、ヨリ戻したんだね」


「あ、はい……その節はお騒がせしました」


「まあ、廃人みたいだった兄貴の様子が豹変したから……そんなことだろうとは思ったけど」


そんなことでさえも嬉しく感じてしまい、あたしは両手で頬をおさえながらにやにやしていた。


「そういや――兄貴にチョコは?ついでだから、持って帰ってやってもいいけど」




北風が、ふたりの頬を強くなでていく。

リュウくんは早く帰りたそうにあたしを見た。



寒空の下――わざわざ近所の公園にリュウくんを呼び出したのには、深い理由があった。


「リュウくん……あのさ、ひとつお願いがあるんだけど……」





にやりと微笑んだあたしに、リュウくんは――悪寒を感じたに違いない。