カイ先輩とサユリさんの一件のせいで、すっかりバレンタインのことを忘れてしまっていた。



3月のあたまにある期末テストにみんなが頭を抱えている日曜日、

あたしはせっせとチョコを作っていた。

もちろん、そんなことして遊んでる余裕なんてないのだが。


去年も、ほんとはカイ先輩にあげたくて――でもサユリさんという存在があったから、渡せないまま持って帰ってきてしまったチョコレート。

今年こそは、堂々とカイ先輩に渡せるのだ。

張りきらずにはいられない!





キャラメル風味のトリュフを作って、それをふたつの箱に分けて詰めた。

片方にはピンク色のリボンを、もう片方には黄緑色のリボンをかける。



「――もしもしっ、あの……今から、おうちにお邪魔してもいいですか……?」


突然の電話に、カイ先輩はかなり驚いていた。

迎えに行こうか?、と言ってくれたけれど、自分で行くから、と断った。


あたしには、もう一つやることが残っているのだ。