「借りてた本を返したいから会えないか、って聞かれて、会うことになった。

あいつと別れた時も電話で済ませただけだったから……正直おれも、あいつから借りたまんまの物がたくさんあって。

信じてもらえないかもしれないけど、やましい気持ちなんてなかった。
おれはおれなりに落ち着いてたし、あいつとのことも、もう昔のことだって割り切ってたし。

うちにあったあいつの物を全部返して、もう、すべて清算する気でいた」




このカイ先輩の言葉が、
果たして真実なのか――あたしにはわからなかったけれど、

あたしはただ、相づちだけを小さく挟んで、彼の話に聞き入っていた。



「正直に言うけど、あいつに会って――もう一回やり直したい、って、言われた」



その瞬間のカイ先輩の気持ちを想像したら、やっぱり胸の痛みがぶり返してきてしまった。

どんな思いだったんだろう。

一度フラれた彼女からの、“やっぱりあなたが好きなの”という告白。