「あのな、ひとつだけ……言い訳していい?」


意味がわからず、あたしが戸惑っていると、カイ先輩は少しだけ眉間にシワを寄せて言いにくそうに喋りだした。


「あの、あいつとの――…サユリとの、こと」


現実と、ちゃんと向き合わなきゃいけない。

ほんとは泣きそうだったけれど、あたしはしっかりと、カイ先輩の顔を見上げた。


たしかに、リュウくんの言う通り――先輩は少しだけ、痩せてしまったようだった。


「ほんと、言い訳にしか聞こえないと思うけど、おれとあいつの間には、なにも、なかった。信じてほしい――全部、話すから」


途切れとぎれに、少しだけ声を震わせながら――カイ先輩は、言葉をつむいだ。





「正月くらいに、知らない番号から電話がかかってきた。おれはメモリを消してたから気づかなかったけど、それがあいつからの電話だった。

あいつだってわかってたら……おれは電話に出なかったと思う」





さっきの荒波のような胸のうちとはうってかわって、あたしの心は不思議と穏やかだった。