この前来た時と、部屋の様子は変わっていなかった。

むしろ、あたしが掃除を手伝ってあげた時よりも綺麗になってるかも。


ベッドに腰を下ろしたカイ先輩に向かい合うように、あたしもテーブルの横に遠慮がちに座った。

片付いた部屋にちょっと驚いて、まじまじと見回してしまったあたしに――カイ先輩は呆れたように笑った。


「部屋が綺麗だから驚いてる、ってか」


あたしは我に返って、無言のままちっちゃくうなずいた。


ふたりの間に漂う緊迫した空気は少しだけ和らいだけれど、

でもやっぱり、あたしの胸の嫌などきどきは一向におさまりそうになかった。




「最近……連絡しなくてごめん」


思わぬ言葉で、今日の本題は始まった。


「どんなふうに謝れば、薫を傷つけずに済むか……おれにはわからなくて」


あたしはなにも言えないまま、ただ目の前のテーブルの上に無造作に置かれたチョコレートを見つめていた。

そっか……バレンタインなんて、すっかり忘れていた。


今年こそカイ先輩にチョコが渡せるんだ、って、つい最近まで張りきっていたことを思い出した。