注文したアップルパイが、手をつけられないまますっかり冷えてしまっていた。


「中林……なんか、やつれたよね。痩せたんじゃない」


食わないならおれが貰うよ、と、リュウくんがあたしのトレイに手を伸ばした。

たしかに、最近はなんだか食欲がないから、まともにご飯も食べていなかった。


でもそろそろ、お父さんやお兄ちゃんが、あたしの異変に感づきそうな気がする。

カイ先輩と別れたこと、お兄ちゃんにバレたら……気まずいなあ。





「――兄貴もだよ」


あたしはただぼんやりしていて、リュウくんの言葉の意味がとっさに理解出来なかった。


「兄貴も痩せた。たぶん、ちゃんと飯食ってない。大学が休みになってから、ずっと部屋にこもってる」


お兄さんにそっくりなリュウくんの目を見つめたまま――あたしは、そっか、とうなずくことしか出来なかった。

そんなカイ先輩の姿を想像したら――なんだか泣きたくなってしまった。