しかしカイ先輩も、あたしとサユリさんが会っていたという事に、相当ショックを受けている様子だった。


「薫……おれは……」


なにかを言おうとして、少しだけくちびるが動いて――でもそのまま、カイ先輩は口をつぐんでしまった。

あたしの肩をがっちりとつかんでいた両手も、徐々に力が抜けていき、

最後には、虚しく空を切ってカイ先輩の元へ戻っていった。


あたしはなみだを拭い、カイ先輩を見つめた。






「だって……結局、カイ先輩が大切にしたのは

あたしとのこんな状況よりも、サユリさんからの電話だったんですよね――…」










あたしの放った言葉が、致命的なものだってことぐらい、自分でもわかっていた。

きっとカイ先輩は、今度こそなにも言えなくなってるはず。


でも、こうでもしないと、あたしはずっと踏ん切りがつかなかったと思う。




カイ先輩の顔が、静かに歪んでいった。