でも、もう――限界だった。


「あたしは大丈夫……、だから……もう」


「かおる……!」


“あたしのこと捨てても、いいんですよ”

そう言いかけたあたしを遮ったのは、カイ先輩だった。


「薫、聞いてくれ、おれとあいつは――」


あたしはきつく目を閉じて、耳をふさいだ。


「会ったんです……あたし、サユリさんに……!」



一度、声に出して言葉にすると――黒い醜い想いは、あたしの胸からとめどなくあふれ出した。


「サユリさんに、言われました。カイを返してくださいって。まだカイのことが好きなんだって。

カイ先輩だって、忘れられずにいるんでしょ?だったら――…」


もう自分では止めることは出来なかった。

カイ先輩に募らせた想いが、いつの間にかすっかりもつれてしまって――どうしようもなかった。


「違う!薫、おれの話を聞け!」


カイ先輩はあたしの肩をつかんで、強く揺さぶった。

一体なにが、違うというのだろう――