音を放つケータイは、カイ先輩の震えるポケットの中にあった。

しかしその音楽のおかげで、一瞬だけ3人の間の空気がゆるみ――森川さんも、そのギラつく瞳を伏せた。


「――っ」


なかなか鳴りやまないケータイにカイ先輩が舌打ちをした。

雑な動作でポケットから引っ張り出し、折りたたみのケータイを開く。


するとカイ先輩は、ディスプレイを凝視して――あたしはてっきり電話を切るものだと思っていたけれど、すぐに電話に出た。

そしてそのまま、部室を出て行ってしまった。

バタン、と勢いよく部室のドアが閉められ――ふたたび、静寂が訪れた。


あたしはその様子を、ただ呆然と見ていた。





「…………」


森川さんもそのまま勢いよくソファに倒れこむように座り、あたしのほうを見た。


「なんか……ごめん」





どうしてだろう。

あたしは、わかった気がした。




「サユリさんだ……」


「――え?」


「……今の電話…………」