「――――…」


森川さんに片腕だけ支えられたまま、あたしは息をのんだ。





そこにはカイ先輩がいた。

3人がお互いを見つめ合ったまま――時間が、一瞬、止まった。














「……おい」


何よりも先に沈黙を破ったのは、

地の底から響いたかのような、カイ先輩の低い声だった。


「森川……どういうことだ?」



平日なのに学校をサボってるあたしがいて、
ふたりきりのこの状況、
強くつかまれたままの手首、
泣いているあたし。


森川さんはカイ先輩をにらみつけたまま、あたしの腕を離した。


そういえば前にもいつか、こんなシチュエーションになったことがあった――

あの頃のカイ先輩は、あたしのことどう思っていたんだろう……






「言えよ、森川!」


カイ先輩は森川さんの胸ぐらにつかみかかり、一方の森川さんは、全くの無抵抗だった。


「薫になにした!?」





あたしは無我夢中で、カイ先輩の右腕に飛び付いた。