「ほら……カイ先輩だって、きっと、サユリさんのほうがいいんですよ。あたしなんかより、ずっと一緒にいた人のほうが――」


改めてそう口に出すと、自分でも気づかないうちになみだが出ていた。


「……カイさんの彼女はきみなんだ。どうしてそのことに自信を持たない」


「だって……っ」



カイ先輩の仕草や表情。
ローレルの中。
カイ先輩の部屋の壁。

すべてに、サユリさんの思い出が残ってる。


「結局、あたしは“代わり”でしかないんです……!だったら、あたしでいる必要もないでしょう……?」


カイ先輩のことが大好きだ。

でも、彼を好きになればなるほど――ずっと、あたしにつきまとって離れないものがある。

それは、彼の“過去”だ。


「……いい加減にしろ」


泣き叫んだあたしの腕を、森川さんが立ち上がって強く掴んだ。


「カイさんはきみのことが好きだから一緒にいる。彼はそんないい加減な男じゃない。どうしてそれを、信じてあげられないんだ!?」


森川さんに怒鳴られ、あたしは力が抜けてソファから滑り落ちそうになった。





その時だった。

部室のドアが開いたのは。