「カイには2度会いました。でも、2回とも、まともにわたしの話は聞いてもらえなかった」


今度はサユリさんのほうが、自嘲ぎみに笑ってみせた。


でもその言葉を喜んでいいものか、あたしにはわからなかった。

だってほんとうは、カイ先輩だって、サユリさんの元に戻りたいのかもしれない。

でも、あたしという存在がいるから――カイ先輩は、自分にブレーキをかけてるだけなのかもしれない。


カイ先輩は優しいから、あたしの想いを、無下に出来ないだけなのかもしれない――












気づけば、注文したミルクティは半分以上残ったまま、すっかり冷たくなっていた。


あたしは、ようやくはじめて――サユリさんの顔を、正面からまじまじと見た。

なみだで濡れたほほ、少しだけ黒く落ちてしまったマスカラ。

カイ先輩が、好きになった人……





サユリさんは、あたしの目を見て、少しウェーブのかかった髪を揺らし、ふたたび頭を下げた。


「自分勝手なお願いだってことはわかってます……でもわたしには、カイしかいないんです……!

カイを、返してください――」