あは、ははは

それって――両想いって、言うんじゃない?

サユリさんは、カイ先輩のことが好きで――カイ先輩は、サユリさんのことが好きで。



自分の中の、もうひとりのあたしが、声をあげて笑った。


危うく落としそうになったコーヒーカップをソーサーに戻して、

あたしはただ呆然と、膝に置いた自分の指先を見つめていた。


「ほんとにごめんなさい……でも、薫ちゃんにはどうしても言いたくて」


と、サユリさんは、ぎゅっと握りしめていたハンカチで目を押さえた。

綺麗な人って、どうして、泣き顔もこんなに綺麗なんだろう――


「わがままよね、こんなの――ただのエゴでしかないの。

嫌な女だって思うでしょう?でも、わたし自身どうすることも出来なくて……薫ちゃんにまで嫌な思いさせて……」



でもあたしには、サユリさんを嫌な女だとは到底思えそうになかった。

サユリさんを可哀想だとまで思った。


ただ一途に、カイ先輩を愛していたがゆえの過ちだったのだ――そして、今でも彼女は、ただ一途にカイ先輩を愛しているのだ。