思わず絶句してしまった。

あたしが寂しく独りで待っていたこの時間はなんだったんだ!

勝手に兄をアテにした――自分が一番悪いのだけれど。


「まじっすか……めっちゃ待ってたのに」


「ザ・ン・ネ・ン」


先輩はケラケラと笑いながら、テレビをつけた。

いつもの天気予報の時間も、台風情報ばかりを繰り返している。


時計を見上げると、もうあと5分で7時。

5時すぎには部室に来たはずなのに、いつの間にやらずいぶんと時間が経っていることにようやく気がついた。


「カイ先輩は、なにしに来たんですか?」


「ん?――おれはね、雨に濡れたかわいそうな子猫ちゃんが、ひとり寂しく部室で鳴いてる気がしたから来たの」


あたしは飲んでいた水を吹き出しそうになった。

どうしてこの人は、クチがこんなに上手いんだろう。


「……さすがですね」


「でしょ」


でも、そう笑ったカイ先輩の顔にあたしは少しほっとしていた。