テスト期間中の彼に迷惑にならないよう、金曜日の放課後、あたしは森川さんを待ち伏せた。

モ会の部室じゃふたりきりになれないから、大学の構内でひとり、森川さんが現れるのを待った。

彼が使ってるチャリが停めてあったから――たぶんまだ学内にいるはず。



いよいよ2月も目前で、夕方の風もより一層寒さを増した。

かじかんで赤くなった手をすり合わせながら、あたしはさっきカイ先輩から来たメールの返事を考えていた。


『この前部室に来たんだって?
テストが忙しいのでなかなか会えません('・ω・`)ゴメンナサイm(__)m
でも2月になったら毎日遊んでやるからなー(`ε´)』



あたしはそんないつも通りのカイ先輩のメールに、返信できずにいた。

いつもはケータイにかじりついてるあたしからの返事が来ないこと、

カイ先輩は、不思議に思うのだろうか。

それとも、あたしのことなんて、気にもかけていないのかなあ。


カイ先輩に募らせた不信感にすっかり飲み込まれてしまっていた。








「――」


チャイムの音にはじかれるように顔を上げると――そこには、森川さんの姿があった。