「なにしてんだ、おまえ」


エアコンの風がぽかぽかして、いい気分で横になっていたのに……浅い眠りをぶち壊す、聞き慣れた声がした。


「――あ……へ?あ、お疲れさまれす……」


「寝るなよ、ばか」


「れ?寝てました?いつの間に……」


カイ先輩はなんの躊躇もせず、あたしのすぐ隣に腰かけた。

寝惚けていた頭が一気に目を覚まし、心臓がうるさいくらいに脈を打ち始める。


「ずぶ濡れだな。だからこんなに部室ん中がエアコンで暑いのか」


「あれ、暑いですか?」


「そこまで今日寒くねぇよ」


そう言ってるそばから、あたしの背中を氷が這ったような感覚がして、あたしは身を縮めた。


「そんなに濡れたんなら早く家帰ればいいのに」


「あ、どうせだからお兄ちゃんに家まで送ってもらおうって思ったんです。うち、駅から家まで結構距離あるんで」


「ああ――隼人なら、さっきバイト行ったぞ。なんか今日、急にバイトになったとか言ってたけど」