「おれだって、中林を嫌いだからこんなこと言うんじゃない。中林が可哀想だから言うんだよ」


そう言ったリュウくんの顔は、見たことないくらい真剣だった。


血の気が引いてしまい、足元もおぼつかなくなってしまったあたしを、リュウくんはチャリで家まで送ってくれた。


「中林が望むなら――おれから、兄貴やサユリに言ってやってもいいけど」


“サユリ”という名前に、思わずびくんと身体が跳ねる。

自分でもつくづく情けなくなってしまい、あたしは苦笑しながら首を横にふった。


「――大丈夫……自分で、どうにかする……」


言ったそばからまた頭痛がして、あたしは深いため息をついた。


「あ……!」


ふと、リュウくんがなにかを思い出したようにこちらを向いた。


「一応ゆっとくけど、おれ、別に中林のことが好きだからこんなに言ってるわけじゃないからな!勘違いしないでよ」


一瞬きょとんとして――すぐに気を遣ってくれたのだとわかって、あたしはくすくすと笑った。


リュウくんらしい心遣いで、どうにか笑顔でリュウくんと別れたが

でもやっぱり、空を覆い尽す雲と同じで、あたしの心は晴れそうになかった。