着いたところは霊園だった。

高台の上、たくさんの花が植えられた中に、お墓が並んでいる。


墓地と言うよりは、綺麗な公園のような場所だった。





『あれ?お花、ここに置いて帰るの?』


せっかく、あたしが選んだ百合の花を、お母さんはお墓の前に置いた。


『うん、だってこれはお墓にお供えするために買ったものなの。でも……もうお花、飾ってあるね』


お母さんが困ったように微笑んで指さした花瓶には、確かに、まだ綺麗に咲いている菊の花が生けてあった。


『持って帰ればいいじゃん。おうちで飾ろうよ』


『でもせっかく薫ちゃんが選んだお花だから……』



当時のあたしには、お母さんの寂しげな横顔の理由も、
その言葉の意味も、わからなかった。







『――手を合わせて、お参りしよっか』


そう言ってこちらを振り返ったお母さんは、いつもの、優しいお母さんの顔だった。