『薫ちゃん。お出かけしない?』





お母さんはそう言った。

日曜だけどお父さんは仕事で、お兄ちゃんは友達と遊びに出かけていた。


『――うん!どこに?』


『ふふ、内緒。じゃあ、お昼ごはん食べたら出かけよっか』








お母さんと手をつなぎ、バスに乗った。

乗降口の階段があまりに高すぎて、つまずいてしまったあたしを、

お母さんは笑いながら抱きかかえてくれた記憶がある。





『あのねお母さん。おとといの給食のときにね、デザートのプリンがいっこあまってたの』


『あら、薫ちゃん大好きよね?プリン』


『うん!だからね、みんなであまったいっこをジャンケンしたの。そしたらね、かおるが勝ったんだよ!』


『ふふ、じゃあプリン2個も食べちゃったの?よかったわね』





バスに揺られ、あたしはお母さんにいろんな話をした。

学校のこと、友達のこと、もうすぐやってくる、あたしの誕生日のこと。



お母さんは、目を細めて、あたしの髪をなでた。