音を立てて落ちたペンたちを、拾う気力さえ起きなかった。



サユリさんは、県外の企業に就職したと聞いていた。

もうこちらに、戻ってきたというのだろうか。


もうこれ以上、なにも聞く気にはなれなかったが――どうしてもそれだけが気になって、あたしはリュウくんに聞いた。


「サユリさん……今こっちにいるの……?」


リュウくんは、少し落ち着きを取り戻したみたいで、
長いため息をついて、静かにつぶやいた。


「――いや、正月休みで、こっちに帰ってきてただけだと思う」



その言葉に、あたしは無意識のうちにほっとしていた。

よかった、なんて、喜べる状況じゃないのにね――

サユリさんがこっちにいようがいまいが、あたしの絶望的な状態は変わりはしないのにね。





「たぶん大晦日、兄貴はサユリに呼び出されてうちを出ていった。正月過ぎてからも、もう一回」


苦しげに、そう吐き捨てたリュウくんの顔は、

なみだでぼやけて、もう見えなかった。