しばらく待ってみたものの、お兄ちゃんどころか誰も現れない。

電話もかけたが繋がらない。


「さすがに台風の日まで、わざわざ部室にいるような人はいなかったかあ……」


これといった活動予定がなくても、モ会の部室には、誰かしら必ず人がいる。

みんなで中でゲームしてたり、はたまた誰かが車の整備をしていたり。

今日も少なくとも、兄だけでも部室にいると思ったのに。


「寒いなあ……」


濡れてしまった制服はなかなか乾かなくて、あたしの身体にじっとりと重くまとわりついている。

外の雨がひどくて、なかなか部室を出る気にもならない。


普段、常に人が集まっていて明るい部室なだけに、ひとりぼっちでいるのが寂しくなってきてしまった。



そういえば――あの夏の終わりの草刈り以来、部室には来てなかった。

カイ先輩の、あの話を聞いてから……なんだか部室に行きづらくなっていたのも事実。


会いたいけれど、今は会いたくない――そんなあの人が現れたのは、あたしが部室でうとうとしてしまっていた時のことだった。