「なんで……?」


自分でも気づかないうちに、どうしようもないほどの胸騒ぎで、顔がひきつっていた。

頭の中で、どくん、どくんと――心臓の音だけが、耳鳴りのように響いている。


「リュウくんってば……変なこと言わないでよ」


笑いとばそうとしたけれど、うまく笑うことが出来ない。


「浮気してるような男と一緒にいて、なにが楽しいの?」


「…………!」





浮気?
カイ先輩が?


「――でたらめなこと言わないでよ……!」


あたしは耳をふさいで、大きく首をふった。



まさか――そんなはずはない。


この前だって、あたしと一緒に、母の墓参りに行ってくれた。

あたしの弱いところを全部――受け止めて、抱きしめてくれた。


あたしはカイ先輩のこと、信じてる。

あたしは――……










リュウくんが、激しく机を叩いて、机の上のペンや、ゲームのコントローラーが、音を立てて床に落ちた。





「兄貴は、中林に隠れて、

サユリに会ってんだよ」





そう、リュウくんが吐き捨てた。