そこであたしはようやく――リュウくんの機嫌が悪そうなことに気がついた。


リュウくんって、結構淡白で、あたしに対する態度は冷めてるけれど、

本気で機嫌が悪いことなんて滅多にないから、あたしはどうしたものかと戸惑っていた。


「あ、あのさ……カイ先輩が帰ってたら、テスト頑張ってくださいね、って……伝えてて」


なるべく、当たり障りのない言葉を選んだつもりだった。

メールで言えば済む話だ、なんてつっこみが来るかとひやひやしてたんだけれど――リュウくんの、それに対する答えはなかった。


「――中林」


「ん……?」


リュウくんは静かにあたしの目を見たあと、長いため息をついた。

まるであたしにイラついてるみたいだったから、しくじったなあ、なんて、ひとり頭のなかで反省していたのだが。





「兄貴と付き合うの、やめたほうがいいと思う」





「――――」






リュウくんの言葉に、あたしの身体中の血液が、騒がしく動きはじめた。