頭をなでて、カイ先輩があたしの手をぎゅっと握った。


「ごめんな――なんか、つらい思いさせちゃったな」


あたしは少しだけ微笑んで、小さく首をふった。


「……いえ、来れてよかったです。ありがとう……」


ずっとずっと、考えないようにしてきた、母のこと。

でもようやく、向き合うことが出来たのかもしれない。


天国の母は、あたしの17歳の誕生日を、祝ってくれているのだろうか。


「寒くならないうちに、帰ろうか」


「はい……」


夕焼けに染まった空を仰ぐと、オレンジ色のひこうき雲がひとつ、天の彼方までのびていた。

冷たい北風があたしのほほをなでていく。










遠いとおい、昔のことを、ぼんやりと思いだしていた。


“お母さん”と、母の墓参りに来たことを。