母の命とひきかえに与えられたこの命。

いったい、なんの意味があるというのだろう。


「あたしは……生まれてきてよかったんでしょうか……」


震える声で、
はじめて、そう口にした。


16年間、ずっと、自分自身に問いかけ続けてきたこと。

16年間、ずっと、怖くて答えを聞けなかったこと。


周りを不幸にしてまで、あたしが生まれてくる意味はあったの?











「おれは、嬉しいよ」


カイ先輩は、なみだでぐちゃぐちゃになったあたしの顔をなでながら、笑った。


「お母さんが頑張ってくれたから、おれは薫に出会えたんだよ。

おれだけじゃない。お父さんも、隼人も、もちろんお母さんだって――薫が元気に生まれてきたことを、神さまに感謝してる」


抱きしめられた腕から、カイ先輩のぬくもりが伝わってくる。





母のぬくもりを、あたしは知らない。

ほんとうはあったかいはずの母の愛が――あたしのなかで呪縛のようなものになってしまっていた。