小さくあしらわれた、ピンク色のスワロフスキーが可愛らしい。

大きなダイヤモンドのようなフタをあけると、甘いバニラの香り。


「嬉しいです……」


思わず、泣いてしまっていた。




昔から誕生日は、
祝ってもらうものではなかった。

深い悲しみに、苦しみ悩む日だったから。





「おいで」


ベッドに腰かけるカイ先輩の腕に、後ろから抱きしめられた。


「おれもね……隼人から、その話は少し聞いてるよ」




あたしはその言葉に、小さくうなずいた。


誕生日が来るたび、あたしは生まれてきてよかったのだろうかと、自分に問うた。

あたしさえ生まれなければ、お父さんも、母も、お兄ちゃんも、そしてあの人も――不幸な思いをすることはなかったんじゃないか、って。





あたしの誕生日は、

あたしのお産がもとで死んでしまったあたしの母親の命日。








「隼人がね、薫にはつらい思いをたくさんさせた、って――すごく言ってた」


カイ先輩の腕に抱かれ、あたしはなみだが止まらなかった。