「お……おじゃましまぁす……」


「わりぃわりぃ、散らかってんだよねー最近」


初めて足を踏み入れたその部屋は――まさに、テレビで見る“男子学生の一人暮らし部屋”ようだった。

足の踏み場が、ない!


「こんなとこによく住めますね……」


「こんなとこ、って、失礼だなおまえ」


そう言いつつも、カイさんだって唯一綺麗なベッドの上に避難している。


こういうことで、比べちゃいけないとは思うけど……同じ一人暮らしでも、森川さんの部屋は綺麗だったのに。

いや、カイ先輩の部屋が汚すぎるから、余計に綺麗だったように思えてしまう。


「おまえもこっち来れば」


そう言われ、どうしようもないので、雑誌やら服やらゴミが散乱する部屋を、

フローリングが見えるところを縫うように、奥のベッドまでつま先立ちで歩いた。


「今日はリュウくんは?」


「わかんない……気ぃ利かせて、遅く帰ってくるのかも」


と、カイ先輩は、あたしのオデコに小さくキスをした。