ふたりきりの景色を楽しみ終え、暖房の効いた車に戻ると、お兄ちゃんまでもがすやすやと眠りについていた。


「まあ……徹夜だもんなあ」


そう言って、カイ先輩はひとつ、大きなあくびをした。


出発したのが3時。

あたしは昨日の夕方に少し昼寝してたからまだマシだけど――兄貴や、もちろんカイ先輩は、昨日から一睡もしていないはず。


「大丈夫ですか……?眠くないですか?」


免許も持っていない高校生の自分が、すごく悔しかった。

疲れてるカイ先輩の代わりに、あたしが運転してあげれたら、と、心から思う。


「大丈夫大丈夫。長距離運転は慣れてるから」


カイ先輩は笑って、あたしの頭をぐりぐりなでて、すぐに車を発進させた。





こんなときに、“あの人”だったら――……

カイ先輩のちからに、なっていたのだろうか。


考えないようにしていたことが、次から次へ頭の中に浮かんでいくようで、あたしはぎゅっと目を閉じた。



そんなこと――考える必要はない。

あたしは、カイ先輩の“彼女”として、ここに座っているのだ。