「行きますか?」


「……え?」


「部室ですよ。みんなカイ先輩のこと待ってるんでしょ?」


すると先輩は、離れていたあたしの手を強く握りなおし、歩き出した。


「やだ。せっかくのふたりきりのデートなのに」


駄々っ子のようなカイ先輩が可愛くて、あたしはますます彼を好きになりそうだった。


「だってまだ夕方だぞ?なんであいつら昼間っから酒飲んでるんだよ……。しかもおれにまで電話かけてきやがって」


ぶつぶつと文句を言いながら、カイ先輩は最後に、ぎょっとするようなことをつぶやいた。


「――だって今日は、せっかくのお泊まりなのにねぇ」


わざとらしくあたしの顔をのぞき込むような仕草に、

あたしは慌ててカイ先輩をにらみつけ、その手をぶんっと離した。


「なに言ってるんですか!門限は10時だと、うちのお父さんに朝から何度聞かされたことか……!」


ちぇっと、すねたような素振りを見せたカイ先輩はやっぱり可愛くて、

あたしはまた、どきどきを抑えながら、彼の後ろでこっそりにやけていた。