少しだけ気まずくなったふたりの空気を打ち破ったのは、

未練がましい(と、本人も周りも言っていた)高橋さんからの電話だった。


『お疲れっす〜!カイさぁん!今なにしてます〜?』


その声は隣を歩くあたしにまで聞こえるほどで、カイ先輩は耳を押さえながら顔をしかめた。

電話口からでさえも、アルコールのにおいがしてきそうな高橋さんに、カイ先輩は呆れたように笑っている。


『いまぁ、部室でみんなで飲んでるんすけどぉ、カイさんも来ませんか〜?あ、でもデートかしら』


「……バカ、デートに決まってんだろ」


『ですよね〜!ま、暇なら来てくらさいね!みんな待ってますからね〜』


悪びれる様子もなく電話は一方的に切れてしまい、カイ先輩は苦笑してケータイをしまった。


「――ごめんごめん、高橋からだった」


「聞こえてました」


心底困っているような、カイ先輩の顔が可笑しくて、あたしは思わず笑ってしまった。